土との出会い

思い返せば、幼いころから、どの地、どの国を旅をしても、窯場を訪れていました。
やきものにはかなり興味があったようです。

作り手として、土と火の面白さに出会ったのは、今から18年前。
1年間、岡山・備前での窯焚きのお手伝いに入ったときです。

備前はいわずと知れた、古来からの窯場。
焼き締めといわれる、無釉の薪窯焼成が特徴です。
この地で採れた赤松を燃料に、火を絶やすことなく2週間窯を焚き続けます。
釉薬はかけませんが、その赤松が燃え灰となり、窯の中の作品に自然にかかると、
土の成分とあいまって、自然の釉薬が誕生します。
そして生まれる陶面の景色は、吸い込まれるほどの美しさ。
ものが生まれる、感動的な経験でした。

土の神さんの導きで2008年1月、陶芸家として、独立しました。
18年前、このようになるとは夢にも思っていませんでしたが・・。

 

青馬窯・銭本眞理

管理栄養士から陶芸家へ

食品会社を3年間務めたあと、管理栄養士として公務員をしていた頃があります。

今でこそ、食育ということがもてはやされいますが、
当時の食事指導はなんとも禁欲的で無味乾燥なものでした。
「この病態の人はこれを食べてはいけません」「1日30品目を食べましょう!」
というような教科書どおりの伝道師をしていたわけです。
栄養士の世界では食事は文化だ、という切り口が蔑ろにされていました。
食事を楽しむ・・・この基本を伝える術がなかったのです。

私がそうであったように、一枚のお気に入りのうつわを手にすると
そこに何をつくっていれようか、誰と食べようか、食卓の広がりを生みだす、そんな
可能性をきっと持っていると感じていました。

うつわをつくることで、管理栄養士として実現できなかった、食事のたのしさを伝えられるの
ではないか、そんなことを思っていると、ふと、数年前の備前の窯焚きの感動が甦ってきたのです。
そして無性に土に向かいたくなりました。

 

修業

兵庫県で窯場の助手を経験後、
福井県あわら市の陶彩窯大森正人氏に弟子入り。
金津創作の森に工房があります。
先生の作られるうつわは存在感があるのに手にやさしい心地よさを感じます。
器の種類にもよりますが、一般に、目でみて予測する重さより、少し軽い感じ。これが日常のうつわとして使いやすい、そう思います。
先生の生み出すうつわはまさにそんな感じ。
窯場のお手伝いをしながら、感覚的に色んなものを体得させていただきました。
この経験がなければ、独立は不可能だったと思います。

こちらの窯場はガス窯、電気窯、そして年に数回、薪窯も焚きます。体力は消耗しますが、私には何よりたのしい、うきうきする時間です。
越前は岡山備前とならぶ、日本六古窯の一つ。土の風合いも良く似ています。
私の窯は、作品のねらいも考えて、ガス窯を使ってます・・・が時々、薪で焚く火が恋しくなります。。。

 



GO AHEAD!!  (2005)

越前窖窯焼成 越前土、信楽土

 

 うつわについて

 うつわの語源は「空(うつ)なる輪」と聞いたことがあります。
 うつわを作るとき、その空気の孕みを大事にしていたので、
 この話を聞いて大変腑に落ちました。
 空(うつ)を作り上げる輪(リム)がそのうつわのフォルムを
 生み出すのです。
 空(うつ)が美しいと、食べ物は美しくはえるのだと思います。

 どうぞここにおはいり、というやさしい表情をもったうつわ作り
 を目指して日々精進しております*

 

 


そしてシルクスクリーン

以前から桃山時代ののびのびとした作風のうつわが大好きです。

土味はもちろんのこと、
決して奇をてらわないのびやかなモチーフに心惹かれます。
陶工たちがどれだけ楽しんで仕事をしていたか、
その気持ちがひしひしと伝わってきます。
だからといって、当時のモチーフ、水車や籠目をまねて描いては意味がない。。。

私の生きた時代をその時代の手法で作り上げることによって、
少しでも、当時の陶工の楽しさを表現できるのではないか。
そう思って取り組んでいるのが、シルクスクリーンワークです。

焼き付ける前の原稿はPCでデジタル処理します。
その後シルクスクリーンでインクを刷り込む手作業へ。
アナログからデジタルへの変遷を生きてきた、私にはとてもしっくりくる手法です。

 


まえかけ作家[yumizu]坂田まゆみとの・競作。



幼稚園からの幼馴染、建築家の岡本昭子さんが自らが改装を手がけた、昭和のモダン建築
佐竹台ハイツが残念ながら取り壊しされることになり、それを惜しむ展覧会、「OPEN&CLOSE」展が
2008年5月・6月に行われました。

そのとき、展示会をさせていただいたのがこの二人。
それまではお互いそれぞれの仕事をしていましたが、意気投合。
「馬耳西風」というユニット名で活動開始。(日々の制作ブログコチラ

土が布に歩み寄り、布が土を意識する。。
共通のモチーフで作品づくりをしています。


お陰様で、2008年12月には、東京神楽坂フラスコにて、二人展を開催し、ご好評を得ることができました。    

 



日常に使いやすいもの、という一線はかたくなに守りつつ、
二人でこれからどんどん、たのしいものを生み出していけたらと思っています。
 

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